居場所

馬の群れ

【居場所】

幼かった子ども達が成長し手が離れてきた頃から、私は何だか自分の居場所が無くなった様な、そんな気持ちになっていことがありました。

手が離れてきたとはいえ親としてまだまだすることはありましたし、当時は病気になった親の介護もあったので、時間だけで捉えると忙しい日々を送っていました。

時折友人とランチをしながら他愛もない話をしたり、近場の旅に出たり、映画を観に行ったりと、自分の時間を作ってはその時間のみに与えられた「夢のような時間」を楽しんで息抜きをすることもありました。

しかし空虚感や孤独感を持ちながら、自分の居場所を求めている自分がいなくなることはありませんでした。

今思うとこの時の私は「母親」「親の介護者」という「居場所」に執着し過ぎていたのかもしれません。

「親として子ども達を社会に送り出すまでは、自分のやるべきことはしっかり果たす」
「子どもとして、できる限り親の支えになる」

自分で言うのも何ですが、立派な考えだと思います。

そんな立派な考えを持ちながら、何が自分を孤独にしていたのか、当時の私には分からなかったのです。

そんな私が孤独感や空虚感を持たなくなったのは、カウンセラーとして仕事をしたいと考え、興味だった心理学を、「学ぶ」という意識に変えてからだと思います。

当時、手に入る文献や書籍を片っ端から読んではノートに書いて学んだり、資格をとるための勉強をしたり、人と会って話を聴くチャンスを作るために経験したことのなかった業種のアルバイトをし、そこで知り合った仲間を誘って話を聴いたり、それまで仕事の話をすることはなかった精神科医の友達と人の心理について語ったり・・・

こうして学ばせてもらう時間は私にとってかけがえのない時間となりました。

そして気づけばその頃から私の空虚感や孤独感は無くなっていったのです。

こうして私はだんだんと「母親」「親の介護者」としての居場所への執着が薄れ、「自分の成長や変化」を感じることが出来るようになりました。

「自分の成長や変化を感じる場所」は、求めているだけでは作られません。

どんなに整った環境があっても、そこに自分の成長や変化を感じられなければ、空虚感や孤独感はつきまとうのだと思うのです。

自分の居場所が無いと感じていらっしゃる方は、もしかすると今いる自分の居場所に執着し過ぎているのかもしれません。

しかし、生きていく上で日々の生活はとても大切ですし、放棄するわけにはいかないこともあります。

ですからその場所とは別の、もう一つの居場所を「求める」のではなく、自分で「育てていく」ことで、少しずつ自分の成長を感じたり、変化を感じることができ、その居場所はより居心地の良い自分の居場所になるのだと思います。

そうして自分で育てて行く居場所から繋がって行く方との語らいの時間は決して「夢のような時間」ではなく、リアルに自分の居場所となっていくのだと。

自分にとって最高の居場所、育ててみませんか?

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